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佐々木 裕介
チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所 代表
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チャイルドサポートは子連れ離婚と養育費回収の専門家です。
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離婚前に別居することについて!?~同居義務違反になるのか?住民票はどうすべきか?~

離婚前に別居するイメージ画
離婚届を持つ女性

離婚には準備が必要だと前回の記事で触れましたが、そうはいっても一緒にいたくない! 今一緒にいることが苦痛で仕方ない!1日も早く同居を解消したい!という場合もあります。 しかし、離婚するためには、まだ話し合わないといけないことがたくさんあるはずです。 例えば、財産分与や慰謝料の問題、親権や養育費の問題、そして何よりも「子供への影響」など様々な事情ですぐに離婚できない場合もあります。 また、子供の進学状況や、精神状況を考えるとすぐに離婚に踏み出せない場合もあるでしょう。今回はそんな時どうしたらいいのかお話したいと思います。

この記事を読んでわかること

  • 離婚前の別居について
  • 同居義務違反とはどんなケースか
  • 婚姻費用について
  • 別居中の住民票について
この記事の監修

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)

詳しくはこちら

「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。

目次

離婚前に別居をしてみる

離婚はしたいけれど、今すぐはできないという人それぞれ様々な理由があるかと思います。そんな時は、別居を考えてみるのも1つの方法です。別居であれば、婚姻関係は続いていることになります。少し距離を置くことで心に余裕ができるかもしれません。また、 別居をすることで険悪な夫婦関係を子供にみせないで済むというメリットもあります。 子供は両親の喧嘩や不仲を見ると、自分のせいだと思ったり、不安や孤独を感じたりすることがあります。 別居をすることで、子供にとっても安心できる環境を作ることができるかもしれません。 また、夫婦関係が修復する場合もあります。 別居をすることで、お互いの気持ちや考え方を冷静に見つめ直すことができるからです。 相手の存在や良いところを再認識することもできます。 さらに、別居をすることで離婚後の生活をイメージすることができ、離婚という選択肢が正しいかどうか判断できます。 離婚は一生に一度の大きな決断です。 別居をすることで、自分の本当の気持ちや望む未来を見つけることができるかもしれません。

一方的な別居は同居義務違反?

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法参照

夫婦は法律上、同居が義務づけられていますので、夫婦合意の上で別居するのが原則です。 このような記事を読んで、「勝手に別居を始めたら義務違反になるのでは?」「訴えられる可能性があるのでは?」という心配をされて別居の一歩目が踏み出せない方もいらっしゃいます。 しかし、DV、モラハラなどが理由で別居の合意が得られない場合、一方的に別居の準備を始めて子供を連れて家を出ても、同居義務違反を問われるリスクはほとんどありません。 なぜなら、別居の合意が得られない場合でも、別居の理由が正当なものであれば、同居義務違反とは認められないからです。

同居義務違反にはならないケース

同居義務違反にならないケースは、

  • 夫婦関係が冷えきっていて、互いに別居を認めたケース
  • 配偶者が不倫をしているケース
  • 配偶者からDVやモラハラを受けているケース
  • 子供が虐待されているケース

です。上記のようなケースでは別居をしても同居義務違反にはなりません。DVやモラハラは、夫婦の平穏な生活を著しく妨げるものであり、別居の正当な理由となります。 また、別居の期間が長くなっても、同居義務違反とはなりません。 別居の期間が長くなると、離婚の意思が固まったとみなされることがありますが、それは離婚の成立要件の一つである「夫婦の破綻」を認めるものであり、同居義務違反とは関係ありません。 したがって、別居の合意が得られない場合でも、別居の理由が正当なものであれば、同居義務違反を心配する必要はありません。

同居義務違反になるケース

  • 同意なしに一方的に身勝手な理由で別居を始めてしまうケース
  • 家庭を顧みずに、不倫相手と同居を始めてしまうケース
  • 家庭を顧みずに、家出をしてしまって生活費も渡さないケース など

上記のケースの場合、同居義務違反を問われることがあります。

別居中の生活費

別居してしまうと今まで片方の収入で生活していた場合、別居後どのように生活を送っていったらいいか困ってしまいます。たとえ収入があったとしても、家賃や生活費をだせるほどの金額ではない場合どうなるのでしょうか?

婚姻費用

別居を始めたからと言って、離婚をしたわけではありません。婚姻が続いている状態です。夫婦には日常の生活費、医療費、交際費など必ずかかる費用つまり婚姻費用を分かち合う義務があります。この義務は、民法第760条に規定されており、夫婦は互いに協力して婚姻生活に必要な費用を負担しなければならないとされています。その為、別居しても、この義務を怠ることはできません。別居側が無収入だったり、相手より収入が少なかったり、子供を引き取っていたりする場合、婚姻費用を請求することができます。

(婚姻費用の分担)

第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

民法参照

婚姻費用算定表

婚姻費用の請求は、別居の理由や、別居期間、夫婦の収入にどれくらいの差があるか、子供が何人いて何歳なのかなど、さまざまな要素によって変わります。婚姻費用については、夫婦の話し合いで自由に決めることができますが、話し合いがうまくいかない場合や、話し合いができない場合もあります。そのような時は、家庭裁判所が出している算定表を参考にして、婚姻費用の額や支払い方法などを話し合うこともできます。算定表は、夫婦の収入や子供の数などに応じて、婚姻費用の目安を示してくれるものです。

婚姻費用算定表

上記をクリックすると裁判所の婚姻費用ページを見ることができますので参考になさって下さい。

婚姻費用の分担請求調停

婚姻費用については、夫婦の話し合いで自由に決めることができますが、相手が話し合いに応じてくれない場合や、話し合いがうまくいかない場合もあります。そんな時は、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てることができます。これは、家庭裁判所が仲介役となって、夫婦の間で婚姻費用についての合意を目指す手続きです。この手続きを申し立てる場所は、原則として相手の住所地がある家庭裁判所になりますが、夫婦が合意すれば、別の家庭裁判所でも申し立てることができます。申し立てるには、申立書のほかに、自分の収入状況のわかる源泉徴収票や給与明細といった書類も必要になります。婚姻費用の支払い義務は、請求した時点から発生するものであり、過去にさかのぼって支払いを求めるのは難しいとされていますので、早めに請求することが大切です。また、一度金額が決まっても、その後生活状況が変わった場合には、金額の変更を求める調停を再び申し立てることもできます。

婚姻費用と養育費の関係

別居するときは、子どものお金のことも考えなければなりません。子どものお金のことは、離婚する前と後で違います。 離婚する前は、子どものお金に関しては「婚姻費用」に入っています。婚姻費用には、自分の生活費と子どもの生活費の両方が含まれています。 離婚した後は、子どものお金に関しては「養育費」となります。養育費とは、離婚した夫婦のうち、子どもと一緒に暮らしている方が、もう一方の親からもらう金銭のことです。養育費には、子どもの生活費だけが含まれています。 例えば、夫と妻子が別居をして生活するとき、たいていは妻が夫に婚姻費用をもらいます。この婚姻費用には、妻の生活費と子どもの生活費の両方が入っています。しかし、別居後に離婚すると、妻が夫にもらうお金は、子どもの生活費だけになります。そのため、養育費は、婚姻費用よりもだいたいは少ない金額になります。

別居後1年以内には離婚している夫婦が多い

別居をしてしまうと、離婚問題が長期化しそうだわ!

佐々木弁護士

そんなことはありません。厚生労働省の調査によると、別居から1年未満で8割の夫婦が離婚に至っているそうです。

別居することは、夫婦間の問題を解決するための一つの方法ですが、それでも婚姻関係が続いているという法的な事実に対して不安や精神的苦痛をかんじることがあるかもしれません。しかし、その別居期間は必ずしも長くないということが、厚生労働省が令和2年に行った調査からわかります。その調査によると、別居後に離婚に至った夫婦のうち、別居期間が1年未満だった夫婦の割合は、協議離婚の場合は86.2%に達し、裁判離婚の場合でも56.8%という高い数字でした。これは、別居をすると離婚を決断する夫婦が多いということを示しています。

また、このデータから、同居中はどちらか一方に離婚への迷いがあったとしても、別居することによって急速に互いの気持ちが離婚へ傾き話し合いが進む傾向が読み取れます。別居をすることで、離婚後の生活がイメージしやすくなるからかもしれません。そして、裁判離婚では1年未満に離婚する夫婦の割合が約半分になっています。これは、裁判離婚となると、離婚成立までに1年以上の時間かかってしまうことが原因と思われます。たとえ、夫婦が離婚という選択をするにしても、裁判ではなく、夫婦間で話し合い協議離婚を選択することが離婚への一番の近道かもしれません。

別居するときの持ち物

別居するときに持っていくべきものについて、詳しく説明します。別居するときは、自分の身分を証明できるものや、生活に必要なもの、子どものためのものなどを忘れずに持っていきましょう。具体的には以下のようなものがあります。

  • 現金
  • 自分名義の通帳・カード
  • 運転免許・パスポート・マイナンバーカード
  • 印鑑
  • 携帯電話
  • 健康保険証・年金証書
  • 配偶者名義の預貯金通帳のコピー
  • 財産に関する資料のコピー
  • 生活必需品
  • 子供の持ち物 など

財産について

配偶者名義の預貯金通帳のコピーは財産分与や婚姻費用請求の際に役にたちます。一旦別居してしまうと相手の財産について調べるのはとても困難です。財産に関する資料は相手に勝手に財産を処分されては大変です。別居の話を切り出す前に調べておくべきでしょう。別居前に確認しておきましょう。

別居理由が相手の不貞行為

別居理由が、相手の不貞行為(不倫・DVなど)の場合はその証拠も別居前に集め、持って出ましょう。今後配偶者や不倫相手に対して慰謝料請求するときの証拠として役に立ちます。

共有財産

結婚前から持っていたもの、自分のお金で購入したものは持ち出すことができますが、結婚後に購入したものは共有財産です。相手と話し合ったうえで持ち出しましょう。

子供の荷物や書類

自分が親権者になりたいと考えている場合は、子供と離れてはいけません。必ず連れていきましょう。万が一、調停や裁判で親権を争うことになった場合、同居している親が有利になるからです。その為、子供の荷物や学校関係の書類を忘れずに持っていきましょう。

別居するときに持っていくべきものは、人それぞれで上記のほかにもあると思いますが、大切なのは、自分や子どもの生活を守るために必要なものを優先的に持っていくことです。別居後に元の住まいに戻ることは難しいかもしれませんし、持っていかなかったものを取り戻すことも困難になる可能性があります。別居するときは、慎重に準備をしましょう。

別居するとき住民票は移動させるべき?

別居するときに住民票をどうするかは、別居の理由や期間によって違います。住民票を移動させると、別居先の住所が相手に知られる可能性があります。住民票を移動させないと、今の家の住所がそのままになります。離婚をするつもりで別居する場合は、住民票を移動させるべきです。今の家に戻ることはないと思うので、別居先を新しい住所として登録しましょう。短期間だけ別居する予定の場合や、夫婦の関係を直すために別居する場合は、住民票を移動させないほうがいいでしょう。住民票を移すと、元の住所に戻るときにまた手続きをしなければなりません。それは面倒です。 別居先を相手に知られたくない場合も、住民票を移動させるべきではありません。相手はあなたの配偶者として、あなたの住所を調べることができます。別居先がわかると、相手に追いかけられたり、嫌がらせをされたりするかもしれません。

住民票を移動させるメリットとデメリット

住民票を移動させると以下のようなメリット・デメリットが考えられます。

メリット

  • 公営住宅の申し込みができる
  • 学校・保育園に転入転園しやすい
  • 児童手当を受け取れる
  • 保育料が下がる

公営住宅の申し込みができる

自治体によって公営住宅の申し込み基準は異なりますが、別居中ということだけでは、申し込んでも認められない可能性が高いです。別居期間が長いことを証明でき、所得の基準を満たす必要があります。別居期間が長いことの証明として住民票の移動が必要です。

学校・保育園に転入転園しやすい

子供と一緒に別居するときには、子供の園や学校のことも考えなければなりません。園や学校は、住んでいる場所に近い方が都合がいいと思います。しかし、住民票を移していない場合、編入を受け入れてもらえないことが大半です。学校側に事情を話して受け入れてもらえるケースもあるかもしれませんが、基本的には子供を連れて別居する場合は住民票の移動は必須かもしれません。別居するときには、子供の園や学校のことをしっかり確認しておきましょう。園や学校に相談したり、市区町村に問い合わせてみましょう。

児童手当を受け取れる

子供が小学生や中学生のときには、「児童手当」がもらえます。このお金は、子供の年齢や親の所得によって変わりますが、この給付金をもらえるのは、子供と一緒に暮らしている親で住民票上世帯主です。たいていは、父親の名前で給付金をもらっていることが多いです。住民票を移し世帯主になると、あなたが直接「児童手当」をもらえるように受給者を変更できます。

保育料が下がる

保育料は、夫婦の所得によって変わります。夫婦の所得は、別居する前と後で違います。別居する前は、保育料は、夫と妻のお金を足した金額から決められます。別居しても離婚しないと、夫と妻のお金を足した金額から保育料が決まります。これは、別居しても夫婦の関係が続いているということになるからです。別居する後は、保育料は、子供と一緒に暮らしている親のお金だけから決められることがあります。これは、別居が長く続いていると、夫婦の関係が終わっているということになるからです。自治体によって事情が変わりますので、専門窓口に相談してみてください。

デメリット

国民健康保険料の負担

国民健康保険は、同じ世帯に属する家族が共同で加入する制度です。そのため、住民票の届け出によって世帯が分離されると、国民健康保険の加入者も変わります。この場合は、別居先の市町村で国民健康保険に再加入する必要があり、保険料の納付義務も自分に発生します。ただし、保険料は、世帯の所得水準に応じて課税され、所得が低い場合には減額や免除の対象となる場合があります。

子供の学校・保育園のついて

子どもが通っている学校や幼稚園は、住んでいる場所によって決まっています、その為、住民票を別居先に移すと、学校や幼稚園の区域から外れてしまうかもしれません。そのときは、子どもは別の学校や幼稚園に転入しなければなりません。しかし、私立の学校や幼稚園は、区域に関係なく通うことができます。

住宅ローンの名義人になっている

家のローンは、自分が住むという契約で銀行からお金を借りているものです。その為、家のローンを払っている間は、その家に住まなければなりません。もし、家を出て別の場所に住民票を変えると、銀行との契約を破ることになります。そのときは、銀行は お金を全部返す(一括返済) 別の銀行に借り直す(借り換え) ということを求めてくるかもしれません。 さらに、住民票を変えると、家のローンを払うときに税金が安くなるという特典(住宅ローン控除)もなくなります。ですから、住民票を変える人が家のローンの名義人になっている場合は、気をつけましょう。

チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所

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