離婚をするときには、公正証書を作成することが非常に重要です。公正証書とは、離婚に関する合意事項を公証人によって証明する文書のことです。公正証書を作成することで、離婚後の慰謝料や財産分与、養育費や面会交流などのトラブルを防ぐことができます。しかし、公正証書の作成方法や必要な書類など、知らないことが多くて不安になる方もいるでしょう。そこで、この記事では、離婚時に公正証書を作成するために必要な手順や注意点を、わかりやすく解説していきます。
佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。
公正証書にする内容の準備をしよう
公正証書を作成しようと思っても、まず何をしたらいいのかわかりません。
そうですね!!ではまず、公正証書にしたい内容を確認しましょう。
まず、公正証書にする内容について夫婦で十分に話し合い、整理しておく必要があります。財産、養育費、面会交流などについてです。夫婦間で公正証書にする内容について合意したら、それを離婚協議書にして、互いの認識にズレなどがないか、誰が読んでも1つの解釈しかできないかなど、改めて確認します。具体的には、①当事者がだれか、②どのような財産、権利、法律行為についての公正証書なのか、③債務が履行されない時に強制執行ができるかどうか、といった点を離婚協議書にしていきます。
離婚協議書ってなんですか?
離婚協議書とは、離婚時に、財産分与、養育費、面会交流などについて夫婦間で取り交わした約束を書面化した契約書のことです。
離婚協議書とは、離婚時に、財産分与、養育費、面会交流などについて夫婦間で取り交わした約束を書面化した契約書のことです。口約束も法的には有効ですが、言った言わないのトラブルを防ぐためには書面化することは大切です。
公正証書を作るには、公証役場で依頼する必要があります。(公正証書は自作することはできません)その際には、必要な情報や書類を用意しておかなければなりません。公正証書には法律に違反することは書けませんから、公証役場に行っても、書類が足りなかったり、内容が不適切だったりすると、公正証書がその日に作れなかったり、作ることができなかったりする可能性があります。公証役場には夫婦が揃って平日の執務時間に行かなければいけませんので、職場を休んだり、子供を預けたりと様々な事情のなか、時間を作らなければならないため、一度で済ませたいところです。その為、公正証書を作る前に、公証役場に事前に相談するのがおすすめです。公証役場では無料で相談に乗ってくれますので、公正証書にする内容が問題ないかどうかをチェックし、どんなことを準備すればいいのかを教えてもらうこともできます。
また、弁護士や行政書士に依頼することもできます。弁護士や行政書士に依頼すると、事務所によって確認は必要ですが、離婚協議書の作成から公証役場の予約または代理人を依頼することができます。公証役場へは予約した日に1度行くだけで公正証書の作成ができます。
必要な書類
公正証書を作る日には、書類を揃えて、公証役場に行く必要があります。 公証役場で見せる書類は、次の通りです。必要書類が足りないと、公正証書が作れない場合がありますので、次の書類が全部そろっているかをしっかりチェックしておきましょう。
本人が行く場合
本人を証明する書類(本人確認書類)は、印鑑証明書と実印がよくつかわれます。運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、写真付の公文書と認印も本人確認書類となります。公正証書の種類によっては、特定の資料に限定される場合もあります。
代理人に委任する場合
入院していて公証役場に行けない場合や、公証役場に行く時間がない、離婚する予定の相手と顔を合わせたくないなどといった事情がある場合は、本人が公証役場に出向かず、代理人によって公正証書を作成してもらう方法をとることができます。例えば、弁護士などに代理を依頼します。代理人に委任する場合は「委任状」が必要で、委任状には実印を押印します。そして、委任状が間違いなく本人が作成したものと証明するためには、委任状に印鑑(実印)が押されていて、その印鑑が本人の実印のものであることを証明する印鑑登録証明書が必要となります。
公証役場の執務時間
執務時間は公証役場ごとに異なりますが、大概は、9時から17時という感じです。予約なしに公証役場に行って作成を依頼することもできますが、なかなか難しいでしょう。公正証書にする案件は複雑な内容であることが多く、書面の準備なども必要であることから、時間がかかることが予想されます。また、他の依頼者が来ていれば長時間待たされることにもなりますので、公証人との面接相談については事前に電話で予約をしておくほうがよいでしょう。
公証役場は電話などで事前に予約しましょう。
公正証書作成の手続き
公正証書を作るときには、夫婦で公証役場に行くことが必要です。代理人に任せる場合でも同じです。例えば、夫婦両方とも代理人を使う場合、両方の代理人が一緒に公証役場に行くことが必要です。(夫婦2人の代理人を1人の代理人に任せることはできません。それぞれに代理人が必要です。)公証役場についたら、受付で公正証書を作ってもらいたい旨を言うと、係員に案内されます。担当の公証人に会ったら、公正証書に書いてほしい内容を話します。前もって相談したり、内容をメモしたりしておくとスムーズです。ここで自分の身分や書類を確認されますが、間違いや足りない書類があれば、直したり、もう一度来たりしなければなりません。
必要な書類を確認し、問題がなければ、公正証書を作り始めます。公正証書がその日にできない場合は、決められた日にもう一度公証役場に来る必要があります。しかし、公証役場に何回も行くのは大変なので、前もって電話やメールやFAXで作ってほしい内容を話し合い、公証役場に来たときには、公正証書が完成しているという流れをとる人が多いです。
公正証書ができたら、公証人が当事者(代理人)に内容を読んで聞かせますので、そのときに間違いや不足がないかを確かめます。問題がなければ、当事者(代理人)は署名、押印をします。署名、押印をすることで、公正証書が完成して、法的に効力が発生します。例えば、公正証書は証拠として使えるし、公正証書にしたがって強制的に実行することもできます。
わかってきたけれど、これらすべてを自分にできるか不安だわ!!
そのために弁護士や行政書士がいます。ぜひ一度ご相談下さい。
でも、弁護士と行政書士、どちらに依頼したらいいのかしら?
離婚条件について、夫婦でもめている場合は弁護士、もめていない場合は行政書士に依頼しましょう。
弁護士と行政書士の違い
離婚条件について夫婦でもめていたり、相手と話し合えない状態の時は弁護士に依頼します。弁護士は夫婦の間に入って離婚条件を交渉します。弁護士は法律全般すべての事柄を行うことができ、離婚協議から裁判に至るまですべての事柄に対応します。
離婚条件について夫婦でもめておらず、離婚協議書、公正証書の作成のみを依頼したい場合は行政書士に依頼しましょう。
公証役場はどこにあるの?
これまでお話してきた通り、公正証書を作成するには、公証役場にいる公証人に作成を依頼しなければなりません。では、公証役場はどこにあるのでしょう。公証人は、法務大臣が指定した場所にある公証役場で公証事務を行っています。公証役場は、日本全国に300箇所ほどありますが、すべての市区町村にあるわけではなく、公証事務の需要に応じて設置されています。公証事務の少ない地域では、1つの公証役場が広い範囲を担当していることもあります。
公正証書を作成するためには、本人または代理人が公証役場に行く必要があります。どの公証役場でも公正証書を作成できますが、原本は公証役場に保管されるので、自宅や職場の近辺にある公証役場を選ばれた方が後々便利です。
下記のサイトより最寄りの公証役場を確認できます。
⇒日本公証人連合会
公正証書は原本・正本・謄本の3種類
公正証書は、原本、正本、謄本(とうほん)の3つの種類があります。原本は、公証人が作った公正証書そのもので、公証役場に保管されます。正本は、原本と同じ内容の写しで、依頼人の中で債権者(養育費を請求する側)に渡されます。正本は、原本と同様に法的な効力を持ちます。一方、謄本も原本の写しですが、法的な効力はありません。そのため、依頼人の中で債務者(養育費を支払う側)に渡されることが多いです。そして、公証人法の定めにより、法的効力が与えられる公正証書の正本には、①原本の全文、②正本であることの記載、③正本の交付請求者の氏名、④作成年月日および場所が記載されます。
公正証書の原本が公証役場に保管されます。
公正証書の保存期間は?
公正証書は、公証人が作成した後、原本には番号を付けられます。そして原本は、公証役場の倉庫や安全な建物に保管されます。公証人法施行規則によると、原本の保管期間は、作成した年度の翌年から起算して20年間です。しかし、何か特別な理由がある場合は、20年以上保管されることもあります。
期限や期間が決まっている契約などの場合、その期限や期間が終わった翌年から10年が過ぎると、保管期間が終わったとみなされることがあります。原本は、公証役場の倉庫や安全な建物に保管されており、特別な事情がない限り、外に出すことはできません。保管期間が終わると、原本は破棄されます。破棄するときには、公証人が目録を作って、法務局や地方法務局の長に許可をもらわなければなりません。
公正証書の閲覧手続き
もしも、公正証書をなくしてしまったらどうしたらいいのかしら?
公正証書の原本は閲覧が可能です!
公正証書の原本は大切に保管されていますが、関係者が申請すれば、原本を閲覧することができます。本人は、正本または謄本を手もとにもっていますから、基本的には閲覧の必要がありません。しかし、火事や災害などによって滅失することがないとは限りません。引っ越しの際に紛失する可能性もゼロとはいえません。そのような事態の際には、閲覧を希望します。原則として本人であることを証明する印鑑証明書の提出が必要です。例外的に顔写真付の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)の提出が認められています。
また、公正証書の内容について法律上の利害関係をもつ人も閲覧できます。つまり、公正証書の内容は、法律的に関係がある人だけが見ることができます。関係がある人とは、保証人などの法律で定められた人のことで、ただの知人や友人というだけでは見ることができません。
公正証書の原本は誰でも閲覧できるというわけではありません。本人または、法律上利害関係のある人だけが閲覧できます。
公正証書を作成するには、公証役場に行く必要がありますが、その日のうちにできるというわけではありません。離婚協議書などの書類を用意したり、公証役場の予約を取ったりすることが必要です。事前準備をしっかりと行うことで、公正証書の作成をスムーズに進めることができます。公正証書の作成に関してわからないことがあれば、公証役場に電話やメールで問い合わせたり、弁護士や行政書士などの専門家に相談したりすることができます。公正証書は重要な書類なので、不安や疑問を解消してから作成することがおすすめです。
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