離婚の際、「どういった場合に慰謝料がもらえるの?」という疑問をお持ちの方も多いと思います。慰謝料とは、離婚によって生じた精神的苦痛や生活の不安などを慰めるために支払われる金銭のことです。すべての事例が対象になるわけではありません。慰謝料は、離婚の原因が相手方にある場合や、不倫などの不貞行為があった場合に請求できる可能性があります。しかし、慰謝料の額や支払い方法は、法律で定められているわけではありません。今回は離婚の際の慰謝料についてお話したいと思います。

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。

慰謝料の法的な根拠
法律でいう慰謝料とは不法行為によって受けた精神的苦痛を慰めるための金銭の支払いです。法的な根拠条文は民法709、710条です。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
民法
上記の内容を満たした場合、「慰謝料」が請求できます。
慰謝料が請求できるケース
具体的にどのような状況が上記のパターンになるのかみていきたいと思います。
- 不倫(性的な肉体関係を伴う)
- 悪意の遺棄
- 暴力
- 性行為の拒否
などが挙げられます。
不倫

不倫は性的な肉体関係を伴わないと、法的な不法行為とは認められません。また、慰謝料を請求する際には強力な証拠が必要となります。
悪意の遺棄
民法では結婚に伴う3つの義務を定めています。
- 同居義務(夫婦が一緒に暮らす義務)
- 扶助義務(生活費を出し合ってお互いが同じレベルで生活を送れるようにする義務)
- 協力義務(力を合わせて暮らしを維持する義務)
です。これらを相手が困ることをわかったうえで故意に行わないことを悪意の遺棄といいます。具体的には
- 生活費を渡さない
- 理由なく別居する
- 不倫相手の家から帰らない
- 健康なのに働かない
- 生活費のほとんどをギャンブルにつかう
などです。
暴力
物理的な暴力で相手を傷つけたり、暴言を浴びせたりすることで、相手を精神的に追い詰める行為は不法行為にあたります。これらを証明するには証拠が必要になります。
性行為の拒否
相手に誘いをかけたのに拒否されるなどの状態が1年以上続くとき、不法行為にあたります。しかし、これらを証明するために証拠が必要となります。メールの内容で拒否されていることがわかるものや、精神的な苦痛を書き綴った日記などが証拠になります。ただし、相手が病気で性交渉に応じられない場合は不法行為とはいえません。
慰謝料が請求できないケース
反対に慰謝料が請求できないケースもあります。例えば
- 性格の不一致
- 重い精神病
- 原因が両者にある
- 相手の親族と不仲
- 相手に離婚原因がない
- 宗教上の対立
- 既に夫婦関係が破綻している
これらの理由では慰謝料は請求できません。
また、慰謝料は必ず夫から妻へ支払われるものではありません。妻から夫へ支払われることもあります。
消滅時効
消滅時効が完成している場合は慰謝料が請求できるケースに当てはまる場合でも、請求できなくなります。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
民法
例えば
被害者自身が配偶者の不倫の事実と不倫相手を知った時から、3年経つと時効が完成します。
※消滅時効の完了が直前の場合は、内容証明郵便による慰謝料の催促をすることで時効の完成を先延ばしにすることができます。早めに弁護士などに相談することをお勧めします。
請求方法
慰謝料を請求できる条件を満たし、証拠もそろったら、いよいよ慰謝料請求をしましょう。
慰謝料請求方法は次の方法があります。
- 話し合い
- 調停
- 裁判
話し合い
夫婦間で話し合いをします。慰謝料の話し合いは、協議離婚の話し合いと並行して行われることが一般的です。夫婦間の話し合いで慰謝料について決めるのは難しいことですが、互いに内容の合意ができれば金額を自由に決める事が出来、時間もかかりません。すべての事項が決まったら、離婚協議書及び公正証書にすることをお勧めします。
調停
話し合いで合意できない場合は離婚調停を申し立てます。離婚調停では、調停委員が双方から話を聞き、話を進めていきます。夫婦だけで話し合うより、合意に至る可能性が高くなります。
裁判
離婚調停がうまくまとまらない場合は裁判「離婚請求訴訟」を起こします。裁判では、互いに主張や証拠を提出しあい、証人尋問や本人尋問を行い、裁判官が法に基づいた公平な判決を下します。裁判を有利に進めるためには、強力な証拠が必要になります。通常は弁護士に依頼して裁判を行います。裁判離婚のデメリットは多額の弁護士費用が掛かること、また離婚まで時間もかかることです。
最後になりましたが、どんなに早く離婚したくても、慰謝料の請求をあきらめてはいけません。慰謝料は、あなたが受けた傷や損失を埋めるお金です。相手との話し合いがうまくいかず、早く終わりにしたいからと、慰謝料請求を放棄しないようにしましょう。一時的に感情的になっても、落ち着いて先のことを考えましょう。慰謝料は、あなたの権利です。
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