この記事を読んでわかること
- 離婚の種類と方法
- 協議離婚の流れ
- 財産分与に関して
- 離婚時の子供に関して
- 離婚協議書・公正証書に関して
- 養育費保証会社に関して

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。
離婚の方法

離婚の方法?1つではないんですか?



離婚にはいくつかの方法があります。多くの人にとっての「離婚」とは「協議離婚」のことを示しています。
協議離婚
離婚には大きく3つの方法があります。一つ目は、「離婚届」に判を押し、役所に提出するだけで成立するのが、協議離婚。これは、夫婦が話し合い、合意していればどんな理由で離婚してもかまいません。全体の9割がこの方法で離婚します。この離婚方法が最も迅速で簡単な方法です。
調停離婚・審判離婚
二つ目は、夫婦の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立て調停委員が間に入り、お互いの言い分を調整しながら離婚を目指す調停離婚。なお、調停離婚の派生として、審判離婚とは、離婚調停においてほぼすべての条件を決めることができたけれど、些細なことが原因で調停が不成立となりそうな場合に、家庭裁判所の裁判官が、職権で必要な決定を下して成立させる離婚のことです。
裁判離婚・和解離婚・認諾離婚
三つ目は、調停離婚がまとまらず終わった場合、家庭裁判所に離婚を求めて裁判を起こす裁判離婚。相手が離婚に同意していない中で、裁判で一方的に離婚を成立させるためには、法的な離婚理由が必要となります。なお、裁判離婚の派生として、裁判の途中で、家庭裁判所から和解の提案を受け、離婚の合意ができたときに成立する和解離婚。または、離婚裁判の途中で、裁判を起こされた側が、裁判を起こした側の請求を全面的に受け入れて成立する離婚は認諾離婚と呼ばれます。
協議離婚は冷静さが大切!?
離婚の方法として最もおおいのが協議離婚です。この方法での離婚は最も早く簡単に離婚することができるというのが最大のメリットです。しかし、その為勢いで離婚してしまうこともできます。つまり、感情的になりすぎて何も決めず離婚してしまうということです。しかし、冷静さを失わないように気をつけなければなりません。 離婚する際に未成年の子供がいると、どちらかの親が親権者になることが法律で定められていますが、感情的になっていると、自分が望む親権者の指定ができないかもしれません。 さらに、協議離婚の場合は、養育費の額や支払い方法、財産分与の方法や割合など、離婚に関するすべての事項を夫婦で話し合って決めることが可能ですが、話し合いがうまくいかないと、養育費や財産分与が不公平になる恐れがあります。 例えば、厚生労働省の調査によると、養育費の金額について合意して離婚した子連れ離婚の割合は、全体の約4割〜5割程度にとどまっています。 そして、養育費が実際に支払われている人の割合は、母子家庭の場合は28%、父子家庭の場合は19%に過ぎないのです。 これは、話し合いを十分にしないで、「毎月養育費を〇〇万円支払う。」というような、子連れ離婚の最も基本的な合意事項すら決められないまま、離婚後の生活に入ってしまうことが多いということを意味しています。 協議離婚では、話し合いは非常に重要なプロセスです。そして、話し合いの結果を書面の残しておくことが大切です。
協議離婚の流れを把握しよう
協議離婚の手続きは一般的に以下のような流れになります。
- 夫婦で話し合う
- 離婚に合意する
- 親権者を決める
- 財産のこと・子供のことについて話し合う
- 話し合った内容を書面化する(離婚協議書・公正証書)
- 離婚届を役場に提出する
協議離婚とは、夫婦が離婚について合意し、未成年の子供がいる場合は親権者を決めて、離婚届を役場に提出することで離婚が成立する方法です。子供の養育費や面会交流の頻度、財産分与の方法や割合などは、離婚届に記入する必要はありません。離婚届に記入しなければならないのは、親権者の名前だけです。しかし、親権者だけを決めて、他のことは何も話し合わないで離婚すると、離婚後に大きな問題が起こる可能性が高いです。離婚した後には、経済的な困難が生じることが多いです。養育費や財産分与について全く話し合わないと、離婚後に生活するための資金が不足することがあります。また、大まかには話し合っても、その内容を書面に残さないと、後から言い争いになったり、約束が守られなかったりすることがあります。例えば、養育費については、支払う側が支払いを拒否したり、減額を求めたりすることがあります。面会交流については、親権者が子供との面会を制限したり、非親権者が子供を無断で連れ去ったりすることがあります。財産分与については、相手が隠し財産を持っていたり、分与の方法に不満を持ったりすることがあります。これらの問題は、離婚後になってから解決するのは非常に困難です。そのため、離婚届に記入する必要がないとしても、子供のことや財産のことは、詳しく話し合って、その後その内容を離婚協議書・公正証書という形で書面に残すことが大切です。
「財産のこと」
離婚するときには、夫婦が一緒に築いてきた財産を分け合って清算します。これを財産分与といいます。 財産分与の対象になる財産は、夫婦が共同生活をしていた期間(別居してからは除きます)に作られたものです。その財産が夫の名義でも妻の名義でも、財産分与の対象になります。 ただし、結婚する前から持っていた財産や、婚姻中に相続や贈与で得た財産は、特有財産として財産分与の対象になりません。 協議離婚の場合は、夫婦で話し合って財産分与の方法を決めることができます。 財産をどのように分けるかは、財産を作るのに夫婦がどれだけ貢献したかが考慮されます。 しかし、夫婦の貢献度をはっきりと測ることは、現実的には難しいです。 そこで、特に問題がない場合には、夫婦の共同財産を半分ずつに分けることが公平だという「2分の1ルール」という考え方が基本となっています。 もちろん、夫婦で財産分与について話し合うときには、2分の1ルールに固執せず、さまざまな事情や要素を考慮して財産分与の割合を調整して決めることも可能です。
専業主婦も半分の財産分与
「2分の1ルール」は共働き夫婦に関しての話しというわけではありません。収入が夫のみで妻が専業主婦の場合も財産は二人のものです。この場合、妻は家事・育児をすることで夫婦の共有財産の構築に協力してきたことが法律上も認められているからです。
リスト化してみよう
以下の財産を調べてリスト化しましょう。
- 現金
- 不動産
- 預貯金
- 自動車
- 積立型保険
- 私的年金
- 将来の退職金
などが財産分与の対象となります。
すべて書き出しましょう。また必要があれば写真などもとりましょう。住宅ローンやその他の借金などのマイナスの財産も対象です。
「子供のこと」
養育費
子供に関しては、主に親権、養育費、面会交流について話し合います。養育費は毎月支払われるものです。いつ、どのように支払われるかなど具体的に決めます。
- 金額
- 支払い期日
- ボーナス月の増額の有無
- 振込先の口座
- 支払い終期
また、養育費とは別に「特別費」というものがあります。「特別費用」とは、子供が進学するときなどに必要になる大きな金額の費用のことです。これらの費用についても、養育費と同様に、夫婦で話し合って決めることが必要です。養育費は、夫婦の感情や争いに左右されるべきものではありません。養育費は、子供が生活するために必要なものであり、子供の権利です。夫婦が離婚しても、子供は父親と母親の関係を失うわけではありません。子供が成人するまで、父親と母親は子供の養育に責任を持ちます。そのため、養育費を「払わない」という選択肢は、本来は存在しません。しかし、現実には、養育費についてきちんとした取り決めをして離婚した夫婦は、少数派です。


面会交流
離婚するときには、子どもの幸せを考えて、親権者でない親と子どもがどのように交流するかを夫婦で話し合っておくことが大切です。 夫婦で合意できない場合は、家庭裁判所に申し立てて、面会交流のルールを決めることもできます。 面会交流をすることは、子どもにとって良いことです。子どもは、離婚した親からも愛されていると感じることができます。子どもの心の成長にも影響します。 面会交流をすることは、親子の関係を断ち切らないことです。親権者でない親も、子どものことを見守っていくことができます。
決めておくこと
面会交流については、夫婦で話し合って決めることができますが、その内容は大雑把にすることもできますし、細かくすることもできます。 大雑把にする場合は、「月1回程度会う」というように、面会交流の頻度だけを決めておくこともできます。細かくする場合は、「月何回、どこで、何時間、どのように引き渡すか」などの面会交流の方法や、「子どもが親権者でない親と一緒に泊まるかどうか」や、「子どもにプレゼントを渡すかどうか」や、「子どもと親権者でない親との電話やメールの連絡の仕方」や、「子どもと祖父母との関係の維持の仕方」などの面会交流に関する事項も決めていくことができます。


書面化しよう
財産分与や子供の養育費など、離婚に関する事項について夫婦で話し合って決めたら、その内容を書面に残しておくことがとても大切です。書面に残すことで、離婚後にトラブルが起こったときに、証拠として使うことができます。書面に残す方法としては、まず離婚協議書という形式で、夫婦が合意した内容を記載します。その後、離婚協議書を元に公正証書を作成するのがお勧めです。
離婚協議書
離婚協議書を作成することの一番の目的は、離婚後にお互いに約束したことを守るようにすることです。離婚に関する事項を詳しく話し合っても、その内容を忘れたり、解釈が違ったりすることがあるかもしれません。そうしたことを防ぐために、離婚協議書という書面にしておくことが大切です。また、離婚協議書を作成することで、財産や子供について何か決め忘れていないか確かめることもできます。しかし、離婚協議書は、夫婦が自分たちで作った契約書です。この契約書に書かれていることを守らなくても、法的な制裁はありません。この契約書は、夫婦が信頼しあって作ったものだからです。離婚する相手と信頼しあって契約書を作るというのは、なかなか難しいことです。そこで、離婚協議書をもとに、法的な効力のある公正証書にすることがおすすめです。
公正証書
公正証書は、公証役場で作成する公文書です。公正証書には、強制執行認諾約款というものを付けることができます。これは、相手が慰謝料や養育費などの支払いを怠った場合、裁判所に強制執行を申し立てることができるというものです。公正証書の作成には、公証役場の手数料がかかりますが、離婚後のトラブルを防ぐためには、必要な投資と考えることができます。離婚協議書や公正証書は、離婚に関する事項を書面化する一般的な方法です。
養育費保証会社に加入する
離婚するときには、離婚協議書や公正証書で養育費の支払いや方法などを決めておくことができます。しかし、実際に養育費をもらうのは、あなた自身が行います。子どもが成人するまで、毎月元配偶者からお金が入っているか、チェックしなくてはなりません。もしも支払いがなかったら、あなたが元配偶者に催促したり、強制執行の手続きをしたりしなくてはなりません。これらのことは、時間もお金も精神も消耗することです。そこで、養育費保証会社というサービスを利用するという方法もあります。養育費保証会社とは、離婚後に子どもの養育費をもらう人が、養育費保証会社と契約することで、養育費の支払いを確実にしてもらえる会社のことです。弊社では、離婚協議書作成・公正証書作成サービスと同時に養育費保証サービスも行っています。養育費保証サービスに加入すると以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
養育費保証会社に加入することのメリットは、以下のとおりです。
- 養育費保証会社は、あなたに代わって債務者に養育費を請求します。あなた自身に支払われる養育費は養育費保証会社から支払われます。そのため、債務者から支払いが行われているかという不安から解放されます。
- もしも債務者からの支払いが止まっても、1年間は養育費が保証されます。つまり、養育費保証会社があなたに養育費を払い続けます。
- 養育費保証会社の弁護士が、強制執行の手続きを行います。弁護士を探すという手間や費用もかかりません。
- 現在一部の自治体では、養育費保証を契約する際の初回手数料を支援しています。初回手数料は、養育費の1か月分程度です
デメリット
デメリットは以下の通りです。
- 月々の手数料3%がかかる。
この手数料により養育費を支払う側の金額は変化しません。支払われる側の金額から3%引かれた状態で振り込まれるというシステムです。
離婚するときには、養育費の支払いに関して、離婚協議書を公正証書にすることや、養育費保証会社に加入することなど、様々な選択肢があります。これらの選択肢のメリットやデメリットをよく理解し、自分にとって最適な方法を選ぶことが重要です。離婚に関する法律や手続きは複雑で難しいことが多いので、弁護士や行政書士などの専門家に相談することもおすすめします。
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