今回は家庭裁判所の手続きについての一つである離婚調停について解説します。夫婦の問題を解決する方法の一つとして、家庭裁判所の調停があります。調停とは、夫婦間の離婚や財産分与、養育費などに関する紛争を、裁判官と調停委員が仲介して話し合いによって解決する手続きです。調停は、費用が安く、自分で家庭裁判所に申し立てをして、調停の手続きを始めることができます。家庭裁判所では、調停の申し立て方法や必要な書類、手続きの流れなどを教えてもらえます。
この記事を読んでわかること!
- 離婚調停とはなにか?
- どんな時に調停を申し立てるのか?
- 離婚調停の流れと申し立て方法
- 協議離婚との違い
- 調停離婚のメリットとデメリット
佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。
離婚調停とは
離婚調停ってなんですか?
離婚調停とは夫婦関係の調整を行う調停の一種です。夫婦間に紛争が生じた場合、解決のために調整を行います。
離婚調停とは、家庭裁判所で行われる、夫婦が離婚に関する問題を調停委員の仲介で話し合う手続きのことです。調停委員は男女1名ずつ合計2名で、当事者の立場を尊重しながら、合意に向けて調整します。調停委員は離婚を強制することはできませんので、当事者のどちらかが離婚に反対すれば、調停は不成立になります。離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整調停(離婚)」で、調停によって離婚が成立した場合は「調停離婚」と呼ばれます。
調停は必ず離婚に向けて夫婦の話を調整していくんですね!!
必ずしも離婚がゴールではありません。夫婦の一方が相手方に対し、離婚を求めて調停を申し立てをする場合(離婚調停)と、円満にやり直すことを求めて調停の申し立てをする場合(円満調停)とがあります。
その他にも、離婚には合意していても、離婚条件が合意できないということもあります。それら離婚条件についてを決める事もできます。例えば財産について、子供の親権について、養育費の金額について、面会交流について、慰謝料についての調整をすることもできます。
調停前置主義・調停先行主義
離婚訴訟を提起する前には必ず、家庭裁判所に調停の申し立てをしなければなりません。このような制度を「調停前置主義」または「調停先行主義」といいます。家事事件手続法は、離婚を含む家庭の争いごとを、いきなり訴訟手続きによって公開の法廷で争わせることは家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図るという見地から望ましくないと考え、当事者の譲り合いにより円満かつ自主的に解決する措置である家調停を経ることを求めているのです。
離婚調停を申し立てる
離婚調停を申し立てるのは、夫婦で話し合っても離婚に関する問題が解決しない場合です。離婚調停は時間がかかるので、簡単に合意できる場合は離婚協議で済ませるほうが良いでしょう。しかし、条件が折り合わない場合や、相手が暴力や虐待をしたり、連絡が取れない場合は、早めに調停を申し立てることをお勧めします。調停を申し立てるときには、離婚したい理由を選択する必要があります。家庭裁判所の申立書には、いくつかの理由が用意されていますが、それ以外の理由でも構いません。調停では、その理由に基づいて話し合いが行われますので、詳細に説明できるように準備しておくことが重要です。
申立書に用意されている理由
- 性格が合わない
- 異性関係
- 酒を飲み過ぎる
- 暴力をふるう
- 浪費する
- 性的不調和
- 病気
- 家族をすててかえりみない
- 精神的に虐待する
- 家族と折合いが悪い
- 同居に応じない
- 生活費を渡さない
- その他
調停の流れ①
まず、管轄の裁判所に調停の申し立てをします。管轄の裁判所とは、相手方の住所地の裁判所又は、当事者の合意で定める家庭裁判所のことです。
申し立て
離婚と調停は申し立てにより始まります。申し立ては郵送でも可能です。家庭裁判所は離婚についてなやんでいる人がくると、相談窓口において手続きについての相談(手続き案内)を受け、相談内容に応じて必要な申立書のひな形(無料)を渡します。また、申立書の記載方法方法等についての説明書も渡し、説明もしています。
必要書類等
- 夫婦関係調整調停申立書
- 照会回答書
- 事情説明書
- 申立人の戸籍謄本
- 連絡先等の届出書
- 相手方の戸籍謄本
- (年金分割についての調停を含む時)年金分割のための情報通知書
調停申立手数料
調停申立手数料は、1200円です。手数料は、申立書に1200円分の収入印紙を貼って納付します。
調停の流れ②
調停期日が決まる
離婚調停の申し立てがされると、その事件を担当する裁判官及び家事調査官が決まります。事件を担当する裁判官は、事案の内容を検討し、弁護士調停委員、専門家調停委員及びの中から、事件にふさわしい調停委員2名を指名して調停期日を決めます。離婚調停の場合、男女各1名を指定します。調停期日は、申し立て期日から3週間ないし1か月前後で決まります。期日が決まると、申立人宛と相手宛に期日の通知書が届きます。
調停
調停を始める前に、当事者双方に調停の進め方や、調停委員の立場や役割について説明がされます。これは精神的に不安定で、相手と同席することが耐えられない状態だったり、感情的になりすぎてしまったり、相手と同席したくないという要望もあるため、別々に行われることもあります。この手続き説明では、調停は自分たちで話し合いをして紛争を解決する手続きであること、調停委員会は公正中立な立場であること、などの説明を受けます。
当事者双方は、聴取を受けます。これは、調停委員会がこの事件の前提となる事実関係を把握するためです。聴かれる内容は、特に申立人がどのようなことを問題と考え申し立てをしたのか、それについてどのような解決を望んでいるのか?などです。具体的には以下のようなことが聴かれます。
- 申立人がどのようなことから離婚を求めるようになったのか
- これまでの結婚生活はどのようなものであったのか
- どこに不満を感じているのか
- 現在相手方と申立人はどのような生活を送っているのか
- 婚姻費用はどうなっているのか
- 離婚後の生活についてどう考えているのか
- 子供が居るならば、親権、面会交流、についてはどのように考えているのか
調停委員会は、聴取した事情を前提に、評議を行います。その評議で争点を整理検討し、どのように進行していくかを判断します。また、検討結果に基づき、調停委員会としての解決案である調停案を検討し、当事者に提示します。
調停委員会が当事者間の調整をした結果、当事者間が合意すれば、書記官が調書を作成します。この調書は裁判の判決と同一の効力を持ちます。合意がされないことが決定的となるまで、調停は1か月に1回のペースで続きます。そして、合意される見込みがない場合には、不成立になります。つまり、調停は終わりになります。
これをすべて自分で行うのは大変そうね!
弁護士に依頼すると、同席してアドバイスなどを受けることができますよ。
- 調停は公正中立である。
- 調停委員会は当事者から意見を聴いて、争点を明らかにするが、紛争を解決するのはあくまでも自分たち自身である。
- 調停調書は判決と同一の効力を持つ。
離婚日
調停離婚は、離婚調停が成立すると、その調書が作成された時点で夫婦は離婚したことになります。つまり、調停成立の日が離婚の日になります。ただ、そのままでは戸籍に記載されませんので、区役所等の戸籍係で手続きをする必要があります。
手続き
調停離婚成立の日から10日以内に、夫婦の本籍地又は届出人の住所ちの役所等に、調停調書謄本を添付して離婚届を提出します。
- 本籍地以外の役所等に届ける場合は、夫婦の戸籍謄本が必要になります。
- 離婚届には相手方の証人や署名押印は不要です。
- 正当な理由なく期間内に届出をしない時は、過料などの制裁を受けることがあります。
調停に相手方が来ない時
離婚調停期日に相手方が来ないとどうなるのかというと、基本的に調停は終了です。なぜなら、相手方が来ないと話が進められないからです。もし、相手方の電話番号などが分かっている場合は、裁判所の書記官が相手に電話してくれることもあります。電話が繋がり次回は来ると約束してくれれば、再度日程を調整して次回期日が決まります。しかし、電話が繋がらないなど相手が全く応じない場合もあります。その場合も次回期日を決める事が多いです。しかし、その後も相手が全く応じず、期日にも来ない場合は、その時は調停不成立で終了します。
このように調停不成立で終了したら
このような状態で調停不成立で終了した場合は、離婚訴訟を行います。離婚訴訟にも相手が対応しない場合は、その分相手が不利になるだけなので、こちらが有利に離婚をすすめられます。
調停離婚のメリット
調停離婚にはいくつかのメリットがあります。
相手と顔を合わせなくていい
1つめのメリットは、相手と直接顔を合わせることなく、調停を進めることができるということです。これは、精神的に不安定な状態にある場合や、相手からモラルハラスメントなどを受けている場合には、非常に重要なことです。相手と顔を合わせることによって、感情的な言い争いになる可能性があるからです。そうなると、離婚の話し合いが円滑に進まなくなり、問題を解決することが困難になります。しかし、離婚調停では、家庭裁判所や調停委員は、当事者ができるだけ顔を合わせないですむように配慮してくれます。例えば、待合室は別々になっていたり、調停の説明が別々に行うこともあります。事前に、当事者が相手と顔を合わせたくないという意見書を出しておくこともできます。
話がスムーズにできる・話の場をつくることができる
2つ目のメリットは、調停委員の仲介によって冷静かつスムーズに離婚の話し合いができるということです。これは、精神的に不安定な状態にある場合や、相手からモラルハラスメントなどを受けている場合には、重要です。相手と顔を合わせることによって、精神的に不安定になり話が進められなくなる場合もあるからです。そうなると、離婚の話し合いが円滑に進まなくなり、離婚に関する問題を解決することが困難になります。しかし、離婚調停では、調停委員は客観的・中立的な立場で、夫婦それぞれの意見や主張を聞いたうえで問題を整理し、双方が納得できる解決策を提示するなどして、話し合いを進めてくれます。その結果当事者双方は、冷静に話ができますし、調停委員が法律に則った解決策を示してくれますので離婚や解決策を受け容れやすくなります。そもそも相手が話に応じてくれないケースもあります。そのような場合も調停を利用すれば、まずは相手を話し合いの席につかせることができます。離婚調停を申し立てると、家庭裁判所から相手に呼出しの通知が送付されます。裁判所からこのような呼び出しがあれば、ほとんどの人はそれを無視することなく、調停にきてくれます。無断欠席などすれば調停委員の心証を悪くなり、自身が不利になります。
約束が守られない場合は強制執行ができる
判決と同一の効力のある調停調書が作成されることです。調停調書は書記官が作成するもので、相手が調停調書に記載された内容に従って慰謝料や財産分与や養育費の支払いをしない場合には、相手の給料や財産を差し押さえることができます。これは、協議離婚の場合、相手が約束とおりに養育費などを支払ってくれない場合に、すぐに差押えをすることができないのとは違います。協議離婚の場合には、まずは訴訟や調停をして、合意を成立させるか判決をもらってからでないと、強制執行はできません。しかし、調停離婚によって調停調書が作成されていたら、すぐに強制執行ができるので効果的に支払いを受けることができます。
協議離婚ではすぐに強制執行できないのは大変だわ!なにか方法はないかしら?
協議離婚でもお互いの合意した内容を強制執行付き公正証書にすれば、訴訟などを経なくても相手の給与等を差し押さえることができますよ!
離婚調停のデメリット
長期にわたる可能性がある
離婚調停では、裁判官や調停委員が双方の意見を聞き、離婚の可否や条件について調整を行います。離婚調停は、双方が合意に至るまで継続されます。調停期日は原則として月1回程度しか設定されません。したがって、離婚調停による離婚の成立には、長期間を要する場合が多いことを予め承知しておく必要があります。
離婚調停は平日に開催される
離婚調停の期日は、通常、平日の昼間に設定されます。このため、平日に就労している方や、その他の事情で休みを取得できない方は、離婚調停に参加することが困難になり、精神的なストレスになる可能性が高いと考えられます。
戸籍に調停離婚と記載される
調停で成立した離婚は、戸籍に「離婚の調停成立日〇年〇月〇日」と記載されます。普段の生活に影響はでないと思いますが、記載されてしまうという事実は知っておきましょう。
離婚を希望する場合でも、配偶者との間で離婚の条件について協議することは容易ではありません。双方の主張が対立して紛争に発展したり、配偶者が暴力をふるったりすると、自分の権利や利益を守ることができません。また、配偶者の要求に屈して離婚の条件に同意した場合、その内容を後から変更することは困難です。このような状況に陥った場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることを検討する必要があります。しかし、離婚調停に過度な期待をかけることは避けるべきです。離婚調停は、離婚の是非を判断する手続きではなく、双方の立場を考慮して離婚の条件について合意を促す手続きであるからです。
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