離婚というのは、夫婦間の関係が修復不可能なほどに悪化してしまったときに、法的に結婚関係を解消することです。離婚するときには、夫婦の財産や収入、養育費や慰謝料など、これまでの生活を清算するために様々な問題を解決しなければなりません。しかし、それだけではありません。もし夫婦に子供がいる場合には、子供のことも考慮しなくてはいけません。子供は、離婚によって父母の一方と離れて暮らすことになる可能性が高く、その場合には、親子関係がどのように維持されるかということが重要になります。夫婦関係が破綻しても、子供にとっては父母は変わらない存在です。子供の心の安定や健全な成長を考えたとき、離れて暮らす親(非監護親)との関係も大切にしなければなりません。そのために、離婚後も非監護親と子供が定期的に会ったり、連絡を取り合ったりすることを面会交流と呼びます。面会交流は、子供の権利として保障されているものであり、非監護親の権利でもあります。今回は、面会交流について、その意義や方法、離婚時の取り決めやトラブルの対処などについて詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
- 面会交とは何なのか?
- 面会交流を決める時の頻度や条件
- 面会交流が決まらない時の対処法
- 再婚と養子縁組について
- 再婚期間について

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。
面会交流とは
面会交流とは、離婚後に子どもと離れて暮らすことになった親(非監護親)が、子どもとの関係を維持するために行う活動です。面会交流は、子どもの健やかな成長にとって重要なものであり、特別な事情がない限り、実施するべきだと考えられています。面会交流には、直接会って一緒に過ごすことや、手紙や電話などで連絡を取ることなどが含まれます。面会交流は、民法によって親の権利として認められているものではありませんが、離婚時に協議で定めるべき子どもの監護に関する必要な事項として規定されています。面会交流については、離婚時に取り決めておくことが望ましいですが、法律で決められた時期はありません。離婚時に取り決めておかないと、後になってトラブルが起こる可能性があります。また、離婚前に子どもに会えない状況にある場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。面会交流を考える際には、子どもの福祉・利益に資するのは何かという視点で、感情的な対立に陥らないように注意することが必要です。
面会交流の条件や頻度
面会交流の頻度や条件は、基本的には父母間で話し合って決めます。面会交流は、子どもの権利として実施すべきものであり、子どもの利益を最優先に考えることが重要です。面会交流の方法には、対面で会うことや、電話やメールなどで連絡を取ることなどがあります。面会交流の頻度には、週1回や月1回など様々なパターンがありますが、子どもの年齢や性格、親子関係などによって異なります。面会交流の時間は様々ですが、離婚時に詳細を決めておくこともできます。(午後1時から午後4時など)宿泊の有無も決める事ができますが、ほとんどの場合は宿泊なしで数時間程度という傾向があります。面会交流に関する連絡や待ち合わせ場所や実施場所なども、事前に話し合っておくことと離婚後スムーズに面会交流が実施されます。しかしあまり詳細に決めてしまうと柔軟性に欠けてしまします。話し合いで合意できた場合は、合意内容を離婚協議書または公正証書にしておくことがおすすめです。
決める内容
例えば以下のような内容を決めておくことができます。
- 面会交流の頻度
- 面会交流の時間
- 面会交流の場所
- 面会交流時の連絡手段
- 普段の連絡手段
- 宿泊の有無
- 行事の参加
- プレゼントの受け渡しについて
- 親戚との関わり方について
これらすべてを詳細に決めるかどうかは夫婦の関係性にもよると思います。詳細に決めておくことがかえってスムーズの面会交流の実施を阻害してしまうこともあります。双方当事者にとってどのような規定が有用がよく考えて決めましょう。
面会交流と養育費の関係
面会交流と養育費は、どちらも子供のことに関係することですが、それぞれ異なる性質を持っています。面会交流は、子供の権利として保障されているものであり、非監護親との親子関係を維持するために必要なものです。養育費は、子供の生活費や教育費などを支払うために必要なものです。面会交流と養育費は、子供の福祉や利益に資するものですが、面会交流と養育費は別に考えなくてはいけません。つまり元配偶者が養育費を支払わないからといって、面会交流をやめたりしてはいけません。逆に、面会交流ができないからと、養育費の支払いを拒むこともしてはいけません。養育費の支払いの有無が面会交流の実施に影響を与えるべきではありません。それは、面会交流は子供の権利だからです。感情的なことで子供の権利を侵してはいけません。もし、話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。
面会交流は義務なのか?
面会交流とは、離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親が、子どもとの親子関係を維持するために行う活動です。面会交流は、子どもの権利として保障されているものであり、子どもの心の安定や健全な成長にとって有益なものです。そのため、特別な事情がない限り、面会交流は実施されなければなりません。面会交流に応じる義務があるかどうかという問題は、子どもの利益を最優先に考えるべきです。離婚や別居を決意する状況では、相手に対して悪感情を持っている場合が多いかもしれませんが、それは子どもと親の関係ではありません。子どもは、離婚や別居によって父母の一方と離れて暮らすことになっても、どちらの親からも愛され、大切にされていることを実感して成長するべきです。面会交流を通して、そのことを子どもに伝えることが、親の責任です。もちろん、面会交流を行うことが子どもの利益にかなわない場合もあります。その場合は、面会交流を認めない、もしくは一定の制限を付ける必要があるかもしれません。しかし、その判断は、感情的なものではなく、客観的なものでなければなりません。
面会交流を行わないやむを得ない事情
面会交流は実施されなければならないと上記でお話しましたが、場合によっては、面会交流を行わないという、やむを得ない判断をすることもあります。例えば、次のような場合には面会交流の実施に慎重に対応すべきでしょう。
- 子どもを虐待する、子どもの心を動揺させるなど悪影響を与える場合
- 母に対して暴力をふるい、面会交流をスムーズに実施できない場合
- 非監護親に薬物使用の疑いやアルコール依存等がある場合
- 非監護親が子どもを連れ去るリスクがある場合
これらの場合は、面会交流を行うことが子どもの利益にかなわないと判断される可能性があります。
子供自身が面会交流したがらない
面会交流を実施する上で、子供が非監護親に会いたがらない場合はどのように考えたらいいのでしょうか?面会交流は子ども自身が面会交流に対してどのような意思を持っているかが、重要な要素となります。子どもが本心から「会いたくない」と言っている場合は、その意思を尊重する必要がありますが、子どもの年齢や同居親の影響なども考慮する必要があります。子どもがある程度の年齢になると、自分の意見を言えるようになりますが、それが必ずしも本心であるとは限りません。例えば、同居親が面会交流に反対していたり、相手親に対して持っている悪い感情を子供に伝えている場合、子どもは同居親の考えに影響を受けて、面会交流に消極的になってしまうことがあります。このような場合、面会交流を制限するのではなく、同居親に面会交流の基本的なルールを守ってもらうなどの対応が必要となります。家庭裁判所の実務では、10歳前後を目安に直接に意思の確認をし、意思を重視する傾向にありますが、その他の事情から、面会交流を実施することが子どもの利益にかなうと判断される場合には、面会交流を認める審判がなされることもあります。子どもが高校生くらいになって、自らの考えとして、「会いたくない」と言っているようであれば、その考えを尊重すべきであり、無理矢理会わせることはできないでしょう。
面会交流について話がまとまらない場合
面会交流について相手と合意できない場合、家庭裁判所に面会交流の調停で調停委員を介して話し合いをして決めるか、または審判を申し立てて裁判所に決めてもらうことができます。面会交流の調停申し立てには、①離婚調停を申し立てて、その中で面会交流についても話し合う方法と、②面会交流調停を別に申し立てる方法があります。すでに離婚が成立している方は、②のみとなります。
調停と審判
子の監護に関する処分、面会交流調停とは、子どもとの面会交流について合意ができない場合に、裁判所に申し立てる事件です。離婚前や別居中でも、この事件を申し立てることができます。裁判所では、調停委員という専門家が、両親の間に入って話し合いを進めます。調停委員や裁判官は、面会交流の内容や条件を決めるために、家庭裁判所調査官という職員に子どもの状況を調べてもらったり、子どもとの面会交流を試みたりします。調停委員は、子どもの年齢や性格や生活などに配慮して、子どもの負担を減らし、子どもの気持ちを尊重した話し合いを行います。また、両親に、子どもとの面会交流の際に守るべきことをアドバイスしたりします。しかし、話し合いが成立しない場合は、調停が終わり、審判という手続きに移ります。審判では、裁判官が、すべての事情を考慮して、面会交流の内容や条件を決めます。
再婚と養子縁組
離婚や別居によって、子どもと離れて暮らすことになった親が、子どもとの面会交流を行うことは、原則として実施すべきです。しかし、場合によっては、面会交流を行わないという、やむを得ない判断をすることもあります。例えば再婚するとき、子どものことを考えて、今後の面会交流をどうするか決めます。子供が小さいうちに再婚する場合には、再婚相手が子どもを養子にすることもあります。これを養子縁組と言います。養子縁組は、夫婦と子どもの関係を法律的にも実質的にも強くすることができます。養子縁組をすると、子どもは新しい親の名字や戸籍に入ります。そして、新しい親は子どもの面倒を見たり、お金を出したりする義務ができます。小さい子どもは、時間がたてば、新しい親になれることができます。養子縁組は、子どもにとって安定した家庭を作ることになります。結果、子供は養親と新しい親子関係を築くようになっていきます。そのことを考えた上で面会交流を行わないという判断もあります。
再婚と養育費の見直し
再婚するときは、養育費についても改めて考えなければいけません。養育費とは、子どもの教育や生活に必要な費用のことで、離婚した親は、子どもと同居していない方が、子どもに対して養育費を支払う義務があります。養育費の支払いは、子どもが成人するまで続きますが親が再婚すると、養育費の支払いが変わることがあります。養子縁組とは、法律上の親子関係を変更することで、養子縁組をした子どもは、新しい親と同じ姓や戸籍に入ります。そして、新しい親は子どもの養育や財産の管理などの権利と義務を持ちます。そのため、養子縁組をした子どもに対しては、元の親は養育費を支払わなくてもよいとされることが多いです。養子縁組をすると、元の親との親子関係は消滅し、新しい親との親子関係が成立します。ただし、新しい親が経済的に困難であったり、元の親が子どもとの面会交流を希望したりする場合は、養育費の支払いを続けることもあります。再婚するときは、面会交流と一緒に、養育費の支払いについても元配偶者と話し合って決めることが大切です。
再婚禁止期間の見直し
ところで、男性は離婚後すぐに再婚できますが、女性は離婚から100日以内の再婚が法律で禁止されていました。この規定は、女性が前夫の子を妊娠している可能性がある場合に、子の父親が誰であるかを明確にするために設けられたものです。しかし、この規定は、女性の再婚の自由を制限し、男女間の平等を損なうものとして、長年にわたって批判されてきました。そして、令和4年12月10日、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律が成立し、令和6年4月から施行されます。この改正により、再婚禁止期間は廃止され、女性は離婚後すぐに再婚できるようになります。また、嫡出推定制度も変更され、婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定する期間は、婚姻の成立の日から200日を経過した後から離婚の日までとなります。これにより、子の父親の判定がより正確になり、子の利益も保護されます。女性だけ再婚禁止期間があるのは不合理ですし、先進国の多くでは再婚禁止期間は廃止されています。そもそも、この法律ができたのは明治時代です。今は令和です。時代に合った考え方に法律も変えていかなければなりません。
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